工学の基礎とは?
工学の基礎とは,人事院のパンフレットで「工学に関する基礎」と書かれている部分です。 1次試験の専門試験の最初の20問を指しています。内容は,高校から大学教養レベルの数学・物理で, 理工Iで出題されています。もっとも理工IVを初めとする理工系のその他の職種でも, いくつかの問題が共通,あるいは類似問題として出題されるのが普通です。 出題数は次のようになっています。 (H.20:理工I以外は,理工Iとの共通・類似問題をカウント)
職種 | 数学(必須) | 物理(必須) | 数学(選択) | 物理(選択) | 割合 |
---|---|---|---|---|---|
理工I | 9 | 11 | × | × | 50% |
理工III | 3 | 2 | 0 | 0 | 12.5% |
理工IV | 1 | 1 | 3 | 1 | 15% |
なお,理工I以外は,あくまで理工Iとの共通・類似問題をカウントしただけです。 実際には,これ以外にも独自問題の中に,工学の基礎範囲と言えるものが入っています。 これもカウントすると次のようになります。
職種 | 数学(必須) | 物理(必須) | 数学(選択) | 物理(選択) | 割合 |
---|---|---|---|---|---|
理工III | 3 | 4 | 3 | 2 | 30% |
理工IV | 2 | 1 | 3 | 2 | 20% |
工学の基礎の出題内容・勉強法
工学の基礎の,第一の特徴として,短時間で解かなければならない,ということがあります。 時間を最大限使っても,1問10分程度で解いていかなければなりません (1問10分では40問解けませんが)。 参考書を見ながらゆっくり時間をかけて解くのであれば,解けるかもしれませんが, この時間制限で解くためには,しっかりとして理解と演習が必要になります。
第二の特徴として,出題範囲が広い,ということがあります。 大学受験の参考書は,それなりに役に立つでしょうが,大学教養範囲になると,それでは足りません。 一方で,高校範囲全般が出るわけでもなく,さらに時間制限があることを考えると, 出題内容に偏りが出てきます。そのため,しっかりとして出題内容の研究が必要になります。 技術系公務員試験の場合,勉強不足で望む人が多いため,出題傾向をふまえているかどうかで, 大きな差が付くといえます。
参考にH.20の出題プロットを掲載しておきます。
数学 | 物理 | ||
---|---|---|---|
番号 | 内容 | 番号 | 内容 |
1 | 2項定理(式の計算) | 10 | 質点の力学 |
2 | 平面図形 | 11 | 剛体の力学(振動) |
3 | 微分計算 | 12 | 弾性体の力学(バネ) |
4 | 積分(面積) | 13 | 等速円運動 |
5 | 多次元の確率 | 14 | 熱量の保存 |
6 | 複素数 | 15 | 熱サイクル |
7 | OR | 16 | 光の干渉 |
8 | フローチャート | 17 | 球形コンデンサ |
9 | 連続型確率分布 | 18 | 電気映像法 |
19 | 交流ブリッジ回路 | ||
20 | 過渡回路 |
国家II種試験との兼ね合い(工学の基礎)
国家I種試験と国家II種試験では,同じ工学の基礎でも,出題範囲が異なります。 また,出題範囲が重なっているところでも,難易度,出題傾向が異なるため, 最終的には,国家I種試験を本命とするならば,国家II種試験とは異なった対策が必要となります。
もっとも,国家I種試験の問題も,国家II種試験で出題される内容が前提知識となります。 ですので,国家II種試験対策をしっかりと取りつつ,直前期に国家I種試験の過去問も検討する, という方法は有効かと思います。 ただし,範囲の重なっていない部分(統計,剛体の力学,熱伝導,光の干渉,水の力学,弾性体の力学)の対策が別途必要ですので, 早めに,国I対策を始めることをお勧めします。
・・・というのが,H.14以降しばらの間通用した答えで, 今後も倍率が上がったり,難易度が上がるなどして当時の状況に近くなれば,同じ答えになるでしょう。
しかし,H.21のように極端に難易度が下がったり,H.18-21のように,倍率の低い状況では, 実際の所,国家II種対策がしっかりできていれば,それで国家I種試験も1次合格レベルには十分に達するのではないか,と思います。 ですので,国家II種の試験対策を中心として取れる問題を確実にこなせば, 国家I種も大丈夫かと思います。ただし,近年の過去問は見ておいてください。
ちなみに・・・そのH.14近辺の高い倍率のときも,僕が地上・国II講座で教えていた生徒さんのかなりの人が, 国家I種の1次試験を合格されていました(2次試験会場で見かけましたので)。 もっとも,当時の生徒さんは,当時の地方上級の,1次倍率5倍以上,といった試験に合格していますので, 当時と今では話が違うかもしれませんが
なお,僕の講義では,国家II種のみ工学の基礎の基幹講座がありますが,数学・物理に全く自身がない人は, そちらの対策で,(現状なら)国家I種でも十分な対策になると考えています(ただし,国Iの過去問は少ないですが)
理工III問題・解答集
テキストサンプルもかねて,H.20の理工IIIの問題・解答を掲載します。 ただし,理工Iとの共通問題・類似問題は除きます。また,地球物理の出題は わかる範囲,ということで。理工Iを受験される方も参考にできる問題が入っています。
番号 | 問題 | 解答 | 備考 |
---|---|---|---|
1 | 平面図形 | なし | 理工I No.2と共通 |
2 | 連続型確率分布 | なし | 理工I No.9と共通 |
3 | フローチャート | なし | 理工I No.8と共通 |
4 | 運動方程式 | 国2レベル | |
5 | 電気映像法 | なし | 理工I No.18と共通 |
6 | 熱サイクル | なし | 理工I No.15と共通 |
7 | 万有引力・等速円運動 | 国2レベル | |
8 | 大気の圧力分布 | 理工Iの工学基礎範囲 | |
9 | 地質時代の酸素分圧の変化 | 教養地理よりやや難 | |
10 | 酸素安定同位体 | 地球科学分野 | |
11 | 沈み込み帯の火山 | 地球科学分野 | |
12 | プレートテクトニクス | 地球科学分野 | |
13 | 河川の侵食堆積作用 | 教養地理の参考に | |
14 | 地球史 | 地球科学分野 | |
15 | 地球科学全般 | 地球科学分野 | |
16 | 微分,行列 | 理工Iよりやや難 | |
17 | 微分方程式 | 理工Iよりやや難 | |
18 | 部分積分 | 計算練習用に(国1,2共) | |
19 | 剛体の運動方程式 | 理工Iでも必須問題 | |
20 | つり合い | 理工Iレベル,国2ではやや難 | |
21 | 極座標の運動方程式 | 理工Iでは出題なし | |
22 | 万有引力の法則 | 理工Iでは出題ほぼなし | |
23 | ポテンシャル | 理工Iでは出題なし | |
24 | エントロピー | 理工I:熱力学・熱機関 | |
25 | 統計力学 | 理工Iでは出題なし | |
26 | 波(合成) | 理工I工学の基礎範囲 | |
27 | 電界 | 理工I:電磁気学(やや難) | |
28 | 振動回路 | 理工I:電気工学(やや難) | |
29 | 円筒コンデンサ | 理工I工学基礎(やや難) | |
30 | 四端子回路 | 国2電気電子情報職 | |
41 | コリオリの力 | 理工Iでは出題ほぼなし | |
42 | 蒸発熱 | 理工I工学基礎レベル | |
44 | 水滴の成長速度 | 理工I工学基礎(やや難) | |
45 | エネルギー収支 | 理工I工学基礎(やや難) | |
46 | 重力加速度 | 理工I工学基礎 | |
47 | 等加速度運動 | 国2レベル | |
48 | 透水 | 理工I:水理・土質(やや難) |
H.22理工I工学の基礎講評
お疲れ様でした。工学の基礎について,ざっと解いて感想を書いておきます。 H.21で大幅に易化した工学の基礎ですが,数学はやや難しくなりましたが,物理は昨年通りで, 易しいままでした。一時期の国家II種の工学の基礎より易しいといえます。 少し驚いたのは,剛体の物理と熱力学の出題がないことです。 よほど昨年の正答率が悪かったのでしょう。どちらも極めて易しい問題で, 勉強したかどうかがストレートに差に表れる,よい分野だったのですがね。 さらに,全体的に知っているかどうかだけで差がつく問題が多く, 正直,出題の質が下がったな,というのが感想です。 はっきり言えば,いかにミスなく問題を解けるか,という「慎重度テスト」+「知識テスト」に 近くなり,一時期のように,問題の読解力,思考力などはほとんど要求されていない と言っていいかと思います。 難易度的には昨年と比べると,数学の分少しだけ,難易度が上がったと思います。 とはいえ,合格者数が激減した影響で,要求される点数は上がりましたが。 では,各問いの難易度です。コメントなどは,こちらへ。 勘違いのあったNo.3について記述を変更しました(2010.05.20)。 難易度はA=易しい,B=差がつく,C=難しいです。 物理については,国家II種,地方上級を受ける人には,いい練習になりましたね。 ただ,地方上級の方が,もう少し難しい問題が出題されるかもしれませんが。
番号 | 概要 | 難易度 | 備考 |
---|---|---|---|
1 | 整数 | A | |
2 | 一次変換 | B+ | |
3 | 空間図形 | A | 国2レベル |
4 | 微分 | B | |
5 | 積分 | B | |
6 | 確率 | A | 国2レベル |
7 | OR | B+ | |
8 | フローチャート | B | 国2レベル |
9 | 確率分布 | C | |
10 | 等加速度運動 | B | |
11 | 剛体のつり合い | A | 国2レベル |
12 | 円運動 | A | |
13 | 運動方程式 | A | 国2「基本」レベル |
14 | 力のつり合い | B | |
15 | ヤングの実験 | B | |
16 | 弦の固有振動 | A | 国2レベル |
17 | 電界 | B | |
18 | 磁界 | A | 国2で過去出題あり |
19 | 交流回路 | B | |
20 | 直流回路 | A |
A=1,B=0.5,C=0として,目標点数を定めると,14点(7割)となります。 1次合格の発表が終わって,倍率が予想外に上がったのですが,結果的にこの基準が 最低限とりたい目標となりますね。